「マーケティングツールを導入したのに効果が出ない」原因と対策を徹底解説

今や、SNSや広告運用は人の手のみならず、ツールを使って自動化、効率化を図れる時代となりました。しかし、私のもとへは「せっかくツールを導入したのに思ったような結果が出ません……」というご相談が後を絶ちません。
なぜ、そうした事態に陥ってしまうのでしょうか。
その要因を深掘りしつつ、ツールのメリット、デメリットに触れながら、上手な選び方、使い方についてもお伝えします。
株式会社吉和の森
代表取締役 森 和吉(もり・かずよし)
https://yoshikazunomori.com/
ウェブ解析士マスター、チーフSNSマネージャー
「キャリア公式サイト」「広告サイト」など、アライアンスを中心とした50以上の月額公式サイト、100万人以上が利用するサイト、100以上のコンテンツの立ち上げ、集客化に成功。1日の売り上げが1億以上のソーシャルゲーム、カジュアルゲームの制作に携わるなど、さまざまな業態・業種にデジタル・マーケティングを取り入れ、企業に追い風を起こし続けている。
・ツールで結果が出せなくて悩んでいるマーケティング担当者
・マーケティングツールの導入を考えている担当者
・マーケティングの効果測定について悩んでいる担当者
「勢い」で決めるのはNG!導入は慎重に検討を
「ツールで結果が出ない」理由、その多くはズバリ「導入したツールを使いこなせていない」からだと私は思っています。
ツールを活用する企業のほとんどは、メーカー代理店などから営業を受けて導入に至ったことでしょう。私も会社員時代から、さまざまな商品の営業を受けてきたので分かるのですが、営業担当者の方は本当にトークが上手ですよね(笑)。どんなものでも魅力的に紹介するので、初めて見るツールだと尚更「すごい!」「便利なものに出会った!」「すごく仕事が楽になりそう!」と感激して、「すぐにでも導入したい!」と思ってしまいがちです。
気持ちはよくわかるのですが、こうしてある意味「勢い」で始めてしまうと、後々支障が出ることもあります。
例えば、MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入する企業は多いと思いますが、ヒアリングしていると「DMなどメール送信で主に使っています」とよく耳にします。確かに、MAツールを使えば開封率の把握や属性別の配信などメールマーケティングが簡単にできます。
ですが実はMAツールには他にもまだまだ機能があって、例えばWebサイトへバナー広告を出稿する、獲得した見込み客を「SNSから」「お問い合わせボタンから」など流入元別にタグ付けするといった機能なども搭載されているのです。
営業担当者が示す実績などは、こうした機能を使いこなした状態のものだと考えた方がいいでしょう。それにも関わらず「ただのメール送信ツール」としてだけ使っていたら効果を得にくいと感じるのは当然かもしれません。
しかもMAツールは年間100万円以上の利用料がかかるケースもあります。目指す効果が得られないだけでなく、無駄なコストもかかってしまうのは非常にもったいないことだなと思います。
また、企業によってはそもそも「使いこなせる人」が社内にいないケースもあるでしょう。華々しい機能があってもそれを有効に使えなければ“宝の持ちぐされ”です。
そのため、ツール導入前には舞い上がる気持ちをいったん抑えて、冷静にツールの機能、ランニングコスト、導入後に誰がどうやって運用していくのか、メーカーのサポートはいつまであるのか、といったことまで、しっかり考えて検討することが大切です。
すでに導入しているツールがあれば、あらためて搭載機能を調べてみてください。「あ、こんな機能あったんだ! 効果がありそう」という発見もあるかもしれませんよ。
ツールの上手な選び方
では、ツールを選ぶ際はどんなことに気をつければよいのでしょうか。
重要なポイントは、自社がツールで叶えたい目的を明らかにした上で、調査や比較検討することです。
「そんなの当たり前じゃん」と思われるかもしれませんが、これが意外とできていないケースが多いのです。
前述の「営業担当者に紹介されたものを契約してしまう」こともそうですし、よくあるのが「何となく高いものを選んでしまう」パターンです。「商品タイプは、無料、年間10万円、年間50万円の3種類があります」と言われた場合、「よくわからないけれど、50万円を選んでおけば効果は出るだろう」と思ってしまうのです。
しかし、必ずしもそうではありません。私自身、ツールは日常的に活用していますし、高額なツールもたくさん見てきましたが、「高額だから効果が出る」とは限らないのです。お伝えしてきたように、どんな高機能なツールでも使いこなせなければ意味がないですし、そもそも自社の目的を叶えられるツールでなければ、望む効果は得られないのです。
逆に言うと、本当に自社が欲しい機能を絞ることができれば、無料やもっと安いツールでも十分対応できる場合も多々あります。私も有料のツールと併せて、「Googleサーチコンソール」「Googleアナリティクス」などの無料ツールを活用しています。大事なのは、「使いこなせるかどうか」を軸にツールを選択すること。そうすれば、おのずとコストダウンにもつながります。余談ですが浮いた予算で、デジタルマーケティングに強い専門家に運用サポートを委託する、情報システム部の知識を強化する、といったことも可能でしょう。
ちなみに他のツールと比較検討をする際、今は「AIに聞く」選択もありますが、私はあえて「検索エンジンで調べる」ことをおすすめします。
なぜならAIはプロンプトにもよりますが、よくも悪くも多くの情報の中から最適解を絞って掲示するものだからです。つまり、その回答だけを参考にしていると視野が狭くなり、限られた枠内で商品を選ぶことになりかねません。結局、営業担当者から紹介されたものを眺めているのと同じなのです。
私はこれを「カレー問題」と勝手に呼んでいます(笑)。みなさんもそうかもしれませんが、カレールウはご家庭で「お決まり」があるもの。例えばそれが『バーモントカレー』なら、スーパーに行ってもそれ以外の商品には目がいかなくなりませんか?
それと同じで、狭い視野で検討していると知らぬ間に「結局、限られたツールしか見ていなかった」ということになりかねないのです。カレーなら失敗しても数百円ですが、数百万の買い物と考えると少し怖いですね。
一方、検索エンジンでは、ネガティブな意見も含めて幅広い情報が表示されます。たくさんの選択肢から「これぞ!」というツールを絞るのは大変かもしれませんが、「このツールはシンプルだけど、口コミを見るとうちにはちょうどいいかも」といった気づきもあるでしょう。より自社に適した、費用対効果の高いツールを選ぶには適した方法だと思います。
ツールのメリット、デメリットとは? 結果につながる使い方
効果を出すためとはいえ、なぜこんなにも慎重に選ぶ必要があるのかというと、ツールにはデメリットとも言うべき特徴があるからです。例えば、
- 多くのツールが年間契約で、導入すると簡単に解約できない
- 使い始めると、顧客情報や運用実績などツールに多くのデータが蓄積されていくため、解約してそれらを手放すハードルが高くなる
などが挙げられます。
つまり一度導入すると、途中で「効果が出ない」「コスパが悪い」と感じても、他のツールに変えづらい側面があるのです。そのため、時間がかかってもじっくり調べて、検討することはとても大事なのです。調べてもわからない場合は、適当に判断せず、専門知識や知見のある人に相談してみるのも一案です。
少しネガティブな情報が続きましたが、もちろんツールにはメリットもたくさんあります。
まず、手間と人手の必要な運用プロセスを自動化し、工数を削減できるのは非常に便利です。企業はもちろん、私のような1人社長の会社、人手不足で満足した運用ができていない企業は、うまく活用できれば劇的に効率化できるでしょう。
また、デメリットに挙げた「データを蓄積できること」は、裏を返せばツールを活用する大きなメリットでもあります。本来なら、マーケティング部署などが行う長期的なデータ分析なども、ツールひとつでできるからです。
導入するメリット、デメリットに加え、自社の「使用目的」や「かけられるコスト」、「担当者のスキルレベル」、「サポート体制」に見合ったツールを活用する。それを意識するだけでも、得られる結果は大きく変わってくると思います。
ツールだけじゃない! 自社の運用に効果的な方法を模索しよう
SNSや広告の運用ツールについてお伝えしてきました。
多くの企業を見てきて、特に残念だと感じるのは、「高額なツールをとにかく導入して満足してしまう」パターンです。活用しきれず、結果も出せず、コストだけがかさんだ結果、事業撤退の危機に陥ってしまった。そんなケースもあります。
繰り返しになりますが、ツールは導入すれば結果がついてくるものではありませんし、状況によってはツール導入が最適解でない場合もあります。便利なツールに頼ることも大切ですが、それだけに依存してしまうのも考えものです。
例えば、担当者のスキルアップに注力したり、専門家の力も借りたりすることで、運用成果をグッと向上させた企業も数多くあります。
ぜひコストパフォーマンスにも注意を払いながら、効果的な運用体制を整えていきましょう。
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編集者情報
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株式会社デジタル・ナレッジ サービス推進事業部 事業部長 野原 成幸 |
わからないことはインターネットで検索していた時代から、AIに質問することでさらにスピーディーに解決できる時代になりました。多くの場合、解決して終わりだと思いますが、「これについてもっと知りたいな」「学んでみたいな」ということも少なからずあるのではないでしょうか。 Pre.STUDYでは、何かを学びたいと思って検索する人にとっての学びの予習(prestudy)になり、明日誰かに話したくなる情報を発信しています。それと同時に、なんとなく湧いた疑問を検索した先で、ふと芽生えた知的好奇心をくすぐり、学びのきっかけになるメディアを目指しています。 |