この記事の取材対象

ファイナンシャルプランナー/ 株式投資研究家/東洋大学講師 坂田 善種

１．株式とは？＜初心者向け＞株式投資に必要な3つの知識

株式投資に興味があるのですが、始める前に最低限知っておくべきことはありますか？

坂田先生

初心者の方が株式投資を始めるとき、押さえておくべき“３つの知識”があります。

1. 株式投資のしくみ
2. 政治や経済の知識
3. 口座開設から注文方法

①株式投資のしくみ

確かにそもそも「株式」とは何なのか、というところから理解する必要がありそうです。

坂田先生

企業は事業運用のために多額の資金が必要になります。その資金の調達方法は大きく３つあります。

1. 投資家に出資してもらう エクイティファイナンス：新株を発行して投資家から返済不要の出資で資金を調達する方法
2. 銀行から借りる デットファイナンス：金融機関や公的な融資など、期限付きの返済が必要な負債で信金を調達する方法
3. 資産を売る アセットファイナンス：不動産などの資産を売却して資金を調達する方法

坂田先生

「株式会社」とは、①の方法で出資者から資金を集めて、それを元に事業運用をして利益をあげることを目的とする企業を指します。出資者は「株主」で、投資の証明書として発行されるのが「株式」で、「株券」とも呼ばれるものです。

「株式投資」では、株主にどのように利益が出るのでしょうか？

坂田先生

株主が株式投資で得られる利益は３つあります。

1. 配当金：企業が1年間に稼いだ金利のうち、株主がもらえる分配金
2. 売買益：「売買益＝買った時の株価-売った時の株価」
3. 株主優待：長期的な株主になってもらうよう企業が提供する制度 例）百貨店の割引カード、鉄道各社の乗車券、食品会社の自社製品など

なるほど。利益を得られる種類が3つもあるんですね。

坂田先生

このうち②は、株式を売った時に得る利益になります。①と③は株式を持ち続けている間に発生する利益です。

②政治や経済の知識

「政治や経済の知識」というと、具体的にどのような知識が必要になりますか？また、どこから情報を得るのがよいでしょうか？

坂田先生

政治に関しては、国の長期的な政策(国策)がどんな方向に向いているのか、つねにアンテナを張っておく必要があります。経済では、まずは「インフレ・デフレ」や「円高・円安」については最低限知識を身に付けておきましょう。

 💡 注目すべきキーワード、ポイント

• 政治：外交、G7、G20、ダボス会議、条約、協定 など
• 経済：景気変動、原油や金(ゴールド)などの価格、貿易、世界レベルの商品 など
• 金融政策：日本｜BOJ（日銀）、アメリカ｜FRB・FOMC、ヨーロッパ｜ECB

 💡 メディアの活用

• テレビのニュースや解説番組：経済、金融全般
• 日経新聞：企業の業績や経済動向
• テレビのワイドショー：トレンドの商品・サービスや話題の企業など

坂田先生

最初は難しく感じるかも知れませんが、繰り返しニュースなどを見ていくと、そのうち知識と知識がつながって、流れが理解できるようになってきますよ。

③口座開設と売買方法

「口座開設から注文方法」についてですが、証券会社を選ぶ時に気を付けるポイントはありますか？

坂田先生

株式の売買には手数料がかかります。手数料は証券会社によって異なるので、各社比較してみるとよいでしょう。他にも、ウェブサイトやアプリが見やすい、電話やチャット対応などが充実しているかどうかも大切です。手数料だけではなく、ご自身の目的にあっているかも重視して証券会社を選びましょう。

口座開設方法や必要書類は証券会社によって異なりますが、多くはこのような流れになっています。

口座開設の流れ（ネット証券の場合）

• 証券会社ウェブサイトの口座開設ページにて必要事項を入力する
• 口座番号、パスワードなどの書類が郵送される
• 口座にお金を入金したら準備完了

坂田先生

およそ10日前後で開始できます。

思ったより早く始められるのですね。株式投資を始めるのによい時期やタイミングはありますか？

坂田先生

ご自身のタイミングでいいと思います。
やはり、健康で体調が良く、ご自身の気持ちに余裕のあるタイミングが適切です。株式投資には、余裕が大切です。

「売買方法」についても簡単に教えていただけますか？

坂田先生

実際の売買には、銘柄コードという4桁の数字を使います。任天堂なら7974、トヨタ自動車なら7203の銘柄コードがついています。買いたい「株数」と「金額」を決めて注文完了です。現在、株式は基本的に100株単位での購入が定められています。

２つの注文方法

注文方法は、成行（なりゆき）注文と指値（さしね）注文の2つがあります。成行注文は、いくらでもいいから買いたいという、値段を指定しない注文方法です。初心者は購入価格や売却価格を指定できる指値注文から始めると安心です。

２．初心者向けの銘柄の選び方

買い方がわかったところで、次に何を買えばいいのでしょうか？銘柄の選び方のコツが知りたいです。

坂田先生

身近な商品やサービス、日頃使っているなじみがあるものがよいですね。

生活になくてはならない商品として「くう、ねる、あそぶ」に関連する食品、生活、趣味、娯楽、スポーツ、芸術などから選ぶとよいでしょう。ヒットすると予感した商品から会社を発見することもできます。

5万円以下で購入できる会社もあるので、初心者でも無理なく始めることもできます。（500円以下の株価なら×100株で約5万円となります）

会社選びでは、看板商品や売れ筋サービスが3つ以上ある会社を探しましょう。ひとつの商品、サービスだけを提供する会社は、万が一の場合、会社の存続が危ぶまれることもあります。柱となる商品やサービスが3つ以上ある会社を選ぶことは、リスク分散として有効です。

初心者にオススメの銘柄の選び方

• 「くう、ねる、あそぶ」に関連するなじみのある商品を扱っている会社
• 5万円以下で購入できる会社
• 柱となる商品・サービスが3つ以上ある会社

坂田先生

40年前までは、花札やトランプが主力商品の会社だった任天堂は、今では世界的なゲームソフト、またはエンターテインメントの会社に変貌しました。このように、変化、変貌する会社を見つけ出すのは夢があります。

３．失敗しない株式投資のポイント

投資の失敗とは？

投資の失敗とはどういう状態を言うのでしょうか？

坂田先生

投資を始めた時の期待を超えないと失敗と言えます。

配当を期待した場合

aの「すえおき」とは前回と同額のことです。現状維持をしている状態なので失敗ではありません。また、今後増配があるかもしれません。
bの場合はその理由を調べるべきでしょう。業績が悪化しての減配であれば失敗になります。前回の配当が特別に増配していて、今回元に戻している場合は失敗ではないです。来年を見ましょう。
cの無配の場合は失敗となります。

値上がりを期待した場合

aは失敗ではありません。6ヶ月以上横ばいなら入れ替えも検討します。
bはどのくらい(％)下落したのか、また、その理由を探りましょう。事件や事故などの突然の理由があったのか？または、業績が悪化したのか？理由なく株価が下落することはほとんどありません。また、上昇することもありません。失敗と判断するには早いので、その後の株価の動きを見ましょう。
反発反転しないなら、失敗となります。ただし、工場の事故火災などの場合は、理由がはっきりしているため、１年ほどで戻ることがあります。

株主優待制度に期待した場合

株主優待を期待して株主になった場合は、その後、aやｂなら残念です。失敗と言えるでしょう。
ただ、最近は株主優待制度を中止する傾向が増えています。株主優待は、個人投資家の楽しみのひとつですが、法人や海外投資家からは廃止、中止の要望が強く、その費用を配当金に回して欲しいと主張しているようです。

坂田先生

まずは、株式投資に何を期待するか、何を目標、目的とするか、を明確にしておくと、あらかじめ備えができます。
①～③いずれも、業績の変化が大切な情報となります。このためにも、決算書を調べる習慣が必要となります。決算書や業績については、経済新聞や「会社四季報」を活用する投資家が多いです。

 失敗しないためのポイント

失敗しないために気を付けることはありますか？

坂田先生

3年以上値上りせず、配当金もない場合は見直しも必要です。
値下りが続いて買い値の半分近くになると、2倍高でようやく元に戻る計算になります。ですから、20%下落の時点でその原因を探すことが必要です。

3年後にはある程度知識も身に付いてくるころだと思いますが……原因はどうやって探せばいいのでしょうか？

坂田先生

その会社自体が何らかの原因で業績が悪化したのか、または、業界全体が縮小しているのかなどです。会社四季報などが参考になるでしょう。

3年はそのままにしてよいのでしょうか？結構長いですよね。

坂田先生

株式投資には余裕が必要です。
3年間は値下りが続いた会社も4年目から上昇がはじまり、5年後には2倍高となり、10年したら10倍高する会社も毎年10社以上あります。中長期投資は株式投資の醍醐味です。
とはいえ、放っておく、ということではないので、業績を確認することは忘れないでください。

ちなみに、投資資金はいくらくらい必要になるのでしょうか？

坂田先生

初めてなら、5～10万円程度で十分です。必要な生活費を充ててまで投資をしないようにしましょう。
無理せず余裕のある範囲で投資することが大切です。

今すぐに投資資金がなくても、毎月1万円ずつ貯めたら半年後、5千円ずつでも1年後には始められますね！

坂田先生

投資金額もはじめは10万円以下から、半年から1年間を投資の成果のゴールにする中期投資として、配当金を狙う安全な投資法がオススメです。
1ヶ月以内に成果を求める短期投資はさけたほうが無難です。

ついつい短期で大きく儲けたいと思ってしまいますが……。

坂田先生

デイトレートやスイングトレードなどの短期売買のコツを教えてくれる書籍や配信動画もあります。でも、初心者の方はまずは基本を学んで「ローリスク、ミドルリターン」を目指すことをオススメします。

４.まとめ

とにかく短期間で儲けを出そうとしないこと、無理をしないことが重要だということがわかりました。株式投資は5～10万円からでも始められるので、無理のない範囲で資金を貯めてみましょう。毎日ペットボトルを買っている場合は、それをやめるだけで月に約5000円、年間で約6万円投資資金に回せます。

その資金を貯める間、コツコツと知識も身に付けていってはいかがでしょうか？株式投資のシミュレーションができるアプリもあるので試してみてもよいですね。

もっと学びたい方へ

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