今回はシナリオに書かれる親子について、脚本家の徳永友一先生にお話を伺いました。
インタビューした日は、徳永先生が脚本を担当した「BOSS」2ndシーズン第9話オンエア日の翌日。執筆したばかりの作品の話題も聞かせていただきました。

事件もののドラマの中にも、最後に流れるのは家族の物語

Nアカ:ドラマには恋愛物、家族物、親子物、友情物等のジャンルがあるように思いますが、親子物は定番の1つではないかと思います。徳永先生は親子物でお好きなドラマはありますか?

徳永:脚本家になるために勉強をしていた時によく読んでいたのは、山田太一さんの脚本でした。山田太一さんの作品は、ご存じの通り家族の描き方が素晴らしかったですね。その中で「岸辺のアルバム」って作品をよく読んでいて。実はこの作品、映像は見ていなくて、シナリオ本でしか見たことがないんですが(笑)、素晴らしい作品でしたね。家族の崩壊から再生を描いたドラマなんですけどね。

Nアカ:親子物、恋愛物、家族物、友情物、などの中で特にお好きなジャンルはありますか?

徳永:僕はいま事件物ばっかりやってますけど(笑)・・・(*注1)やっぱり僕は恋愛物と家族物がやってみたいジャンルですし、好きですね。今後やっていきたいです。

Nアカ:徳永先生が脚本を書かれた中では、「LADY~最後の犯罪プロファイル」で、犯人が小さい頃、お母さんが人を殺すシーンを見てトラウマになってしまったという、柳楽優弥さんがゲスト出演された話(第4・5話)がありましたね。表面は猟奇殺人物ですが、最後にあったのは、親子・家族のストーリーで、その作り方に徳永先生らしさを強く感じたのですが。

徳永:結局行き着くところ、家族の物語になっていくんですよね、登場人物や事件に背景をつけようとすると。昨日の「BOSS」2ndシーズン 第9話の坂口憲二さんの演じた役も、結局親と子の話なんですよね。一家惨殺されて、自分一人が生き残って、復讐のために殺人をしていくという。

Nアカ:「このタイミングでは、親子・家族を使う」というようなシナリオの書き方にテクニックのようなものがあるんでしょうか?

徳永:いや、テクニックというより、感情の行きつくところだと思いますよ。結局、何か、例えば自分が挫折した時は何なのか?って根っこをたどっていくと、家族の問題だったり、それこそ虐待だったり。そういう風に作っていくと、人間の考え方ってそんな複雑じゃないし、決まっていると思うんですよね。

Nアカ:例えば、徳永先生の作品で「ホームレス中学生」は家族物ですけども、先生が伝えたかったメッセージがあるんでしょうか?

徳永:「ホームレス中学生」は自分の作品の中でも好きな作品です。あれは家族解散の話なんですけど、そういう、悲惨な出来事があった時に、絆がより深まるということを体験したという、原作本の想いを忠実に守りたいっていうのがあったんです。そこが素晴らしいと思ったんですよ。家族が解散したのに、父親を恨んでいないって、すごい事だと思うんですよね。そういうところって大切にして描いていきたいなって思うんです。自分でも家族っていうものを大事にしているし、落ち着く場所でもあるんで。

Nアカ:表層で事件を起こしたっていう事実がある。その根底にはその人の経験なり思考があって、その原点に落としていくと親子って事になるんでしょうか。

徳永:そんな気がしますけどね。一番最初に学ぶのが親からだし、親も子どもから学んでいく。家の中がある意味最初の教育の場だと思うんです。そこで学んだ事って、意識的に、というより無意識的に僕の作品にも出ているんだと思うんですよね。

脚本家が描く、あらゆる人格の秘密

Nアカ:脚本上では、徳永先生が経験していない、例えば、女性だったりとか、犯罪者だったりとか…自分と違う人格を描くこともあると思うんですが、その中でも徳永先生の個人の実体験が活かされた作品もあるんでしょうか。

徳永:脚本ではいろいろなキャラを描くんですけど、全部自分なんですよね。犯罪者を描く時、犯罪をする時はよくわからないし、まあ犯罪の手口とかは考えますが(笑)、その裏にある動機とか落とし所は全部自分が出るんです。キャラクターには自分が作られていった、親子関係から学んだことが出るんで、結局どの作品にも僕の経験の影響が出ていると思うんですよね。

Nアカ:別人格になるようだけど、結局、自分が出るって事ですね。

徳永:そういった時に、別人格になっていくと、単なる多重人格になるんですよね。みんなそうだと思うんですが、脚本家ってそうやっていくとみんな多重人格者になってしまうので、自分というものがあって、描きたいものがあって、そこから派生する殺人だったり事件だったり出来事があって、自分の言いたい事を伝えている。そこで自分を持っていないとハチャメチャになってしまうんですよね。

Nアカ:小説家は自分の経験に基づくものが強くて、音楽制作に例えると作詞や作曲に近いと思っていて、脚本家は編曲家というか、テクニカルにどう組み合わせていくかというものだと思っていたのですが。

徳永:もちろん、テクニック的なものでいうとそういう見方はあると思うんです。事件物って1シーンごとの情報の出し入れの整理だとするじゃないですか。「ここで犯人をミスリードさせて」とか「情報を上手く入れないようにして」だとか…そこを見せておいて、落とし所には自分が出てくる。そこが見えてないとならないと思う。そこが、Nアカのシナリオ講座でも伝えている「作家性」ってところなんですけどね。

僕の作品のテーマはずっと一緒で、家族物でも恋愛物でも事件物でも全部そうなんですが、結局人は弱い生き物であることを認めようよと。でも、弱くても上を行こうとする姿勢が美しいと思うんで、「頑張ろうよ」とずっと言っているんです。あがく姿勢は美しいと思うし、魂が入っていると。どの作品でも弱い部分は出ている。訴えたい事は全部一緒なんですよね。
(*注1)ここ最近の徳永友一先生は2011年4月~放送のフジテレビ「BOSS」2ndシーズン、2011年1月~放送されたTBS「LADY~最後の犯罪プロファイル」の脚本を担当されました。
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